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理系作業療法士のブログ

整形外科、認知症、内部障害の作業療法に取り組んでいます。OTの仕事や研究について書いていきます。

「地獄でなぜ悪い」から患者さんの気持ちを考える

地獄でなぜ悪い」〜入院している時、どんな気持ちか?〜

 

2016年末。「恋ダンス」「逃げるは恥だが役に立つ」が大ヒットし、社会現象と言えるまでになりました。

星野源さんの「地獄でなぜ悪い」という曲をご存知でしょうか?

 

星野源さんは、歌手・俳優・エッセイストであるとともに、その若さでクモ膜下出血とその再発により、入院・闘病生活を送っておられたという過去があります。

再発がわかるまでの合間にレコーディングされたのが、「地獄でなぜ悪い」という曲です。

星野源さん自身の闘病生活の経験が、歌詞に現れています。

 

〜病室 夜がそろそろ 心を蝕む 唸る隣の部屋が開始の合図だ〜

〜いつも夢の中で 痛みから逃げてる〜

〜生まれ落ちた時から 出口はないんだ〜

 

私は入院したことがなく、患者さんの気持ちが分かっているとは言い難いのですが、

この歌を聴くとこれまでの患者さんの顔が浮かんできます。

様々な不安や痛みを訴えておられました。

どんな過去を乗り越えてきたか、語っておられました。

これから家族に迷惑がかかるのではないかと危惧しておられました。

 

医者も看護師も、(それから世間的にはマイナーな仕事かもしれませんが)作業療法士も、

患者さんからはどんなことを考えていて、どんな気持ちで過ごしているのか、感じとらなければいけません。

 

相手の気持ちを考える、そんなことは全員分かっている事ですが、実際に行う事は結構な労力のいることです。

 

新年度ですし、もう一度初心に戻って、しっかりと向き合って行こうと思います。

医療関係者の方は、ぜひこの曲を聴いて頂きたいと思います。

考えるべき事が、そこにはあると思います。

 

〜嘘で何が悪いか 目の前を染めて広がる ただ地獄を進む者が 悲しい記憶に勝つ〜

星野源地獄でなぜ悪い」より

考察って何?〜プロのための考察〜

学生が来れば考察を書かせ、新人が来れば考察を書かせるーーーーーー

経験年数が増えれば増えるほど自分では発表せず、若い人が書いたものに難癖つける。

とりあえず「エビデンスは」と聞いてみる。学会に行けば嫌でも目に着く光景で、OTをやめたくなる瞬間の一つです。

ブラックジョークはこの辺にして、この考察というものが非常に厄介です。突き詰めれば当たり前の事実に行き着くし、そうでなければ妄想になります。

例えば、上腕骨の形状と鎖骨・肩甲骨の形状を知り、4次元的に運動を理解していれば、肩関節の関節運動は自然と決まります。

つまり、突き詰めればもうその方法しかないというところに行き着き、原因は自然と決まるし、やるべきことも自然と決まります。

一方、新しい手技があったとします。◯◯法とか◯◯手技といったものです。ある患者さんには有効な場合があるかもしれません。

しかし我々は、プラセボ効果の威力を知っています。二重盲検化試験に近いデザインの研究をクリアしていないものは、正直あまり…と感じます。

そうすると、考察と定跡の線引きは何か?という疑問にぶち当たります。

 

定跡とは何か?

将棋を指さない人には「定跡」という言葉に馴染みがないかもしれません。

定跡を簡単にいうと、これまでに様々な人(棋士達)が指してきた道筋で、良いとされている方法のことです。

作業療法の世界でも、これまでのOT達の通ってきた道筋があります。

定跡を知っていれば、日々の臨床の世界で思考を減らしてより時間を有効に使うことができるようになります。

正直、勉強するのはこの定跡を増やすためと言っても過言ではなく、知っているだけで解決できる方法が増えるため、勉強すればするほど、素早く問題解決することができるようになります。

コクランレビューや診療ガイドラインもそうだし、本や論文も役立つでしょう。

その一方で、知識が増えれば増えるほど、どこからが考察でどこからが定跡なのか、分からなくなってきます。

実際、学会発表の際にレジュメの「考察」欄は自分の主張と同じことを言っている本や論文を書いている偉い先生を探してきます。

ただ、自分と同じことを言っている人が過去にいるならば、その発表や論文はさほど新しいものではないということですし、そこに意味があるのか?という疑問が必ず湧いてきます。

ここで考えるのをやめてしまうのか、それとももう一歩踏み込んで考えるのかで決まると思います。(なんの仕事でもそうだと思いますが・・・)

 

臨床能力の高さ=全体から部分を考える能力

どんな職場にも、「この人臨床能力高いな」と感じる人は一人はいるのではないかと思います。それは一体なんでしょうか?

その人の何がうまいのかを言葉にするのは難しいのですが、自分なりに考えて言語化すると、物事を全体的に診ることのできる人がうまい人なのではないかと思います。

 

遠回りしてから戻ってくる〜呼吸から脳を考える、脳から整形外科を考える〜

一つの分野だけでやっていると、頭打ちになることがあります。

それは、物事を一面的にしか見ていないからということが多いです。

多面的に見ることで、それまで行き詰まっていたところが急に広がることがあります。

私の場合、呼吸、整形外科、脳、循環などを勉強しています。

それぞれ関係ないと思われるかもしれませんが(実際よく言われる)、そんなことはありません。

人間の中で起きていることなので、当然深めて行くと密接に関係しています。

少しずつ知識を深めて行くことで、呼吸を知ることで脳を知ることができ、脳神経の知識から整形外科を考えることができます。

そんなことできない、と思うかもしれませんが、最初は自分の得意なところから深めて行き、それができたらまた別の分野、と少しずつ広げていき、時々戻って景色を眺めて見ると、結構色々な発見があるものです。

それが真に有用な「考察」ではないでしょうか。

簡単に得られる考察なんて、プロとしての価値はありません。

毎日、ゆっくりでいいからほんの少しずつ前に進む、できることならば遠回りして進むことが大切なのではないでしょうか。

 

最後に、メジャーリーガーのイチロー選手の言葉をご紹介致します。

「合理的に最短距離で進める方法はないです。でももし仮に、まったくミスなくそこにたどり着いたとしても、そこに深みはでない。遠回りすることって、大事ですよ。遠回りすることが、結局一番の近道だと、僕は信じてます」(稲葉元選手とのインタビューから抜粋)

大腿骨頸部骨折の作業療法

大腿骨頸部骨折の患者さんへの作業療法って・・・皆様どのようにされていますか?

 

一年目のとき、一番症例数が多く、一番悩んだ疾患でした。

教科書を読んでも、リーチャーとかお風呂の動作指導ぐらいしか載ってないし、OTとしての関わり方はわからないことが多いのではないでしょうか。

 

ヒントは常に、患者さんの訴えにあります。

皆様は、こんな患者さんに出会ったことはありませんか?

 

「わしは布団でしか寝たくない!ベッドなんて使ったことないし、畳にベッドなんて置きたくない!布団でないと嫌!」

・・・この訴えは、他でもない私自身の話なので恐縮なのですが笑

結構この訴えはよく聞きます。

 

こう言われたとき、どうしていますか?本人を無理やり説得してベッドを設置したりしていませんか?

その人らしさを重視することを自称するOTが、ベッドの設置を必死になって説得する、というのは矛盾していると思います。というか、床上動作をしても脱臼しないかどうか、主治医に確認していますか?

 

その人らしい生活を支援するのがOT、とするならば、この願いを叶えてあげるためにどうすればいいか、ここにヒントがあると思います。

あなたの担当患者さんが、和室で寝られるようにするには、どうすればいいのでしょうか。

 

OTは術後からの取り組みを時期で分類するのがベストだと思います。私が実際に行っている臨床(当院は術後〜退院まで関わる)から、3つに分けました。

 

  1. 解剖学・運動学・生理学・整形外科学的なアプローチ(急性期)
  2. ADLのアプローチ(回復期)
  3. 個人因子・認知機能へのアプローチ(回復期〜退院)

術後すぐは、①が大切です。

術創部をグチャグチャにしないように留意しながら筋スパズムをとる、癒着を予防しなければ、後々非常に困ります。癒着は待ってはくれませんし、悠長なことをしていると拘縮します。

それをしていく上では、X線画像を見て、術式を理解し、縫合されている組織の理解は必須です。まずは一人で勉強し、PTに質問し、可能ならば整形外科医と仲良くなりましょう。床上動作ができる術式かどうかは、整形外科医に確認しなければなりません。無理なものは無理なので、絶対に確認してください。

松本先生の著書が詳しいので、一人で勉強しても結構理解できると思います。参考にしてみてください。

 

次に、②ADLのアプローチですが、これは成書があまりなく、各病院によって行う内容が意外と違います。これは、各施設で相談してもらうと良いと思います。

 

最後に、③ですが、認知機能の評価も必要です。リーチャーを使用したり、股関節屈曲・外旋位での動作(後方アプローチの場合)を獲得する必要があるので、理解と記憶は必要です。私は、高次脳機能はADLに汎化できないことが多いため、学会発表以外では机上検査を取ることにこだわりませんが、MMSE程度はとっておくと良いと思います。リバーミードは…状況を見ながら取っていることとします笑。

 

余談ですが・・・

最近、③をやたら褒め称える風潮があります。もちろん大事なことですし、「患者さんと目標を一緒に話し合って決めるまでは身体には触らない」といった高尚なOTもおられます。それはもちろん、素晴らしいことです。

私も、OTになったばかりの頃は③を活かそうと頑張って某カナダや某作業モデルの評価法を躍起になって評価していたこともあります。しかし、落ち着いて考えてみれば、ここは後からでもなんとかなります。急性期には絶対しません。

理由はもちろん、患者さんにとってベストな治療法ではないからです。

相手(患者さん)の立場に立って、最高のことをしましょう。

 

最近は、「OTとPTの違いって何?」と聞かれることにビビらなくなりました。患者さんにとっては、ベストな治療法ならば、セラピストがPTかOTかなんて、どうでもいいことだと思うのは、私だけでしょうか…笑

 

文献

松本正知(著)、青木隆明(監)、林典雄(監):骨折の機能解剖学的運動療法 その基礎から臨床まで 体幹・下肢

2-10 認知障害に対するリハビリテーション脳卒中ガイドライン2009

エビデンスに基づいた医療(EBM: Evidence Based Medicine)とは何か?

作業療法での科学的・数学的リテラシー

エビデンス、という言葉自体は、最近リハビリ・作業療法の学会でも非常によく聞きますので、馴染みがある人は多いと思います。

しかし、作業療法の業界ではまだまだ科学的・数学的リテラシーが高いとはいえません。今日はエビデンスに基づいた医療(EBM: Evidence Based Medicine)について書いてみます。

 

エビデンスがないとなぜ困るのか?

2015年11月26日、栃木県で、Ⅰ型糖尿病の少年を死亡させたとして、自称祈祷師の男が逮捕された。男は、「少年の腹に悪霊がいる」「インシュリンは体に毒だ」と言って治療をやめさせた上に、「祈祷をすれば良くなる」とし、報酬として、両親から約200万円を受け取っていたという。

もちろん、これは全く根拠のない治療であり、男は殺人の容疑で逮捕された。

 

これは強烈な例ですが、端的にEBMを物語っていると思います。エビデンスのない治療が行われていると、このような悲劇が生じるということです。

しかしなぜ、このような事態が生じたのでしょうか。考えられる仮説として(本当にムリヤリこじつけで考えるならば、ですが)、祈祷の直後は、少年が比較的良くなったように見えたのではないでしょうか。それは、プラセボ効果の働きによるものと思われます。

 

プラセボ効果の凄まじさ

アメリカの麻酔科医ヘンリー・ビーチャーが、第二次世界大戦野戦病院モルヒネが足りなくなったときに、傷ついた兵士にやむを得ず生理的食塩水を注射して、強力な鎮痛剤であるかのように思い込ませた。すると驚いたことに、患者はすぐさま緊張を和らげ、痛みや苦痛や不安のそぶりを見せなくなったのだ。プラセボ効果は激烈な痛みも押さえ込むらしかった。1)

 

治療者の立場からすれば、悪いものではないように見えるかもしれません。しかし、患者側としては大問題です。詐欺がまかり通ることになりかねないし、適切な時期に行われるべき治療の機会を奪われているかもしれません。先程の糖尿病の少年は、適切な治療の機会を奪われています。

では、プラセボ効果を排除した治療を調べるにはどうすればいいでしょうか?

二重盲検化試験という方法があります。

 

二重盲検試験

二重盲検化とは、簡単にいえば患者も医師も効果があるかどうか知らない状態、つまりプラセボ効果を可能な限り排除して治療効果を検証することです。

その条件は以下の7つがあります。

  • 対照群と治療群が比較されること
  • どちらの群にも、十分に多くの患者が含まれること
  • 群への割り振りは、ランダムに行われること
  • 対照群には偽薬を与えること
  • 対照群と治療群とを同じ条件下に置くこと
  • 患者には、自分がどちらの群に属しているかわからないようにすること
  • 医師が患者に施す治療が本物か偽物かを医師も知らないようにすること

 

これらを満たしているものが多ければ多いほど、レベルの高い試験と言われるものです。ただし、全世界で数え切れない本数の論文が毎年発表されています。その中でベストなデザインで行われて、ベストな結果を出している治療法を探している時間など、臨床医にはありません。それでは、どうすればよいでしょうか?

コクラン共同計画(Cochrane2))を利用するという方法があります。

 

コクラン共同計画とは

オックスフォード大学に本部を置き、ある治療法について行われた臨床試験の規模や方法を重視し、厳密な科学的方法による評価(系統的レビュー)を行っている。系統的レビューでは、薬の効果だけでなく、あらゆる治療方法の有効性が評価されている。またコクラン共同計画は、関連企業からは1ポンドたりともお金はもらっていないので、結論は公表されている。1)

 

もちろん、リハビリテーションについて、作業療法についてのレビューもされています。英語で書かれたレビューがほとんどですが、日本語で書かれたレビューもあります。

しかし、作業療法で「エビデンスの高い」報告は、残念ながらあまりないのが実情です。その理由はなんでしょうか?

 

臨床試験の規模と研究方法

コクランで、いや系統的レビューで重要視されているのが、①臨床試験の規模②研究方法です。簡単に言えば、大人数で、かつ、プラセボ効果を優位に上回る効果を示せればよいということになります。

臨床試験の規模は言うまでもなく、被験者の人数です。これは、人数が多ければ多いほど信頼性が高く、少なければ少ないほど信頼性が低いのはいうまでもありません。(率直に申し上げて、系統的レビューの観点で言えば、シングルケースはほぼ意味がありません)

②研究方法は、二重盲検化試験に近い、つまりプラセボ対照群と比較する方法を考えて実践することです。(リハビリでプラセボ効果を排除することは非常に困難ですが…)

まあ、これらはかなり端折った話ですので、参考文献の『代替医療解剖』はぜひ読んでみてください。今回は参考にはしていませんが、脳卒中や循環器などのガイドライン(Minds含む)も、ぜひご一読していただきたいと思います。

 

おわりに

作業療法が生き残っていくためには、苦し紛れの方法ではなく、正攻法であるエビデンスを残していく方法で実践していくこと、これにつきると思います。

簡単にできる方法としては、各個人の数学的・科学的リテラシーを高めること。まずここから、と思います。

 

参考文献・サイト

1)サイモン・シン、エツァート・エルンスト:代替医療解剖:2013

2)Cochrane:our evidence

www.cochrane.org

慢性心不全(CHF)の作業療法

慢性心不全(CHF)の基準

CHFは臨床で良く出会う疾患の一つです。

ただ、最近リハビリ職でCHFの基準の間違いを良く見かけます。

血液検査でのBNPだけ見て、「ああ、心不全だ」と思っていませんか?

 

心不全にはFramingham基準という診断基準があります。

これは2つ以上の大基準、または1つの大基準と少基準2つで心不全と判断します。

内容は成書に譲りますが、簡単に言えば、エコーやBNPは含まれておらず、聴診や労作性呼吸困難など、問診と視診で得られるものが中心である、ということです。

リハビリは20分以上行うことは診療報酬で決まっていますので、セラピストが注意深く観察することは重要です。

また、聴診やX線画像でのCTRなどを自分でも見て、実際の患者さんの状態と照らし合わせて自分なりにデータベースを作りあげていくことは重要だと思います。

 

運動負荷は医師やPTが教えてくれると思いますが、ADLを行っても大丈夫か、どの程度、何をしていくか、は残念ながらエビデンスのあるものはなく、各職場内で連携しながら行っているのが現状だと思います。

そのときにOTが中心になれれば、それが今後急性期における作業療法士の役割になっていくと思います。

 

運動療法のポイント

運動療法を進めていく上で、尿量には敏感になっておきたいものです。

CHFは、利尿剤を中心に治療されます。要するに、体の水分を減らし、心臓にかかる負荷を減らすということです。

尿量が増えていれば良いのですが、運動負荷が強すぎると尿を作る腎臓への血流が減り、筋肉に血流が流れてしまい、尿量を減らしてしまいます。

OTでそこまで運動することはないとは思いますが、注意は必要です。

運動負荷さえ間違えなければ、運動耐容能は思っている以上に改善することもありますので、リハビリをしていて楽しいと感じます。

 

その他のポイント

当院ではCHFと認知症を合併していることも多いため、認知症の評価も必要です。

評価は机上検査だけでなく、家の中が片付いているか、家の中で寝ているだけでないかなど、幅広く評価していくことが重要です。

個人的には学会発表や論文投稿を除けば、認知機能の机上検査は、OTの世界で考えられているほどには重要なファクターでない、と考えているのは内緒です。

その件に関しては今後書いてみようと思います。

 

撓骨遠位端骨折の運動療法のポイント

撓骨遠位端骨折は作業療法で数多く出会う疾患の一つです。

撓骨遠位端骨折の運動療法のポイントをまとめてみました。

①浮腫管理 ②癒着予防/剥離操作 ③手関節背屈のために橈屈する

であると思います。

 

①浮腫管理

これは手指の自動運動や6 pack exやテーピングなど、

成書にたくさん記述があるのでそちらに譲りますが、私のおすすめは交代浴です。

自宅でもかんたんに行ってもらえますので、自主練習としても有効です。

浮腫を遷延させるとフィブリンが線維化して可動域制限の原因になりますので、可能な限り早めに取り除きます。

 

②癒着予防/剥離操作

もちろん癒着させないように早期から動かす・・・のは当然なのですが、尺骨骨折合併例や、不安定性の高い骨折などでは、固定期間を長くせざるを得ない場合があります。

(そうでないと骨癒合が不十分になる)

こちらも成書に記述がたくさんありますが、剥離操作を行うのはどこの筋か?どこを操作するのか?は重要です。

プレートの上には長母指屈筋、長橈側手根屈筋があります。

術創部の皮膚の癒着剥離操作だけでなく、これらを選択的にかき分けて動かす操作を行えることは重要です。 

触診技術が必要です。

 

③手関節背屈のために橈屈する

術創部が橈側にあること、疼痛を避けようとすると手関節尺屈位になること、

橈骨月状靭帯の短縮(掌側)などから、

近位手根骨列が骨折前よりも橈骨側に引っ張られていることがあります。

そうすると、手関節背屈時に月状骨が橈骨の月状骨窩にスムーズに収まらず、

背屈可動域が出ない、もしくは手関節背屈して荷重すると痛む、などの症状が見られることがあります。

 

そういうときは、手指側に近位手根骨列を牽引しながら尺骨方向に近づける操作と、

手関節背屈して近位手根骨列を掌側に牽引して橈骨月状靭帯をストレッチし、

手関節橈屈して橈側手根屈筋/伸筋を収縮させておきます。

最後に手関節背屈していくと、結構可動域改善することが多いです。

 

もちろん、骨、軟部組織を傷めないためにそれほど大きな力を加えませんし、疼痛のない範囲で行います。

こちらは、論文や書籍での記述をほとんど見かけたことがないので文献的根拠に乏しいのですが、 即時効果が結構でます。

 

撓骨遠位端骨折の運動療法は一見簡単なように見えますが、安全かつ早く治そうとするとかなり奥が深く、

機能解剖を頭の中に叩き込むことが結局一番の近道だと思います。

X線・CT画像を何万枚と見たり、骨の絵を書いたり、触診の練習をしたりと地道な努力を継続することが大切です。

何度復習しても、しすぎていることはありません。

生活行為向上マネジメント(MTDLP)への疑問

まずはじめに断っておきます。

 

MTDLPに否定的な内容です。

 

力を入れておられる方は不快になるかと思いますので、ここで引き返してください。

 

大丈夫ですね?

 

私個人の意見です。

あくまで個人の意見ですが、未完成品すぎて使い物になりません。

「機能訓練に偏らず、生活を診る」MTDLPの意義は理解しますが、全くと言っていいほど実用的とは言えません。

 

一番大きなポイントとしては、

「OTの介入は生活行為を改善できる」ことを保証するものではない

ことです。

そもそも「生活行為」の言葉の定義も曖昧ですし、人によって違いすぎますし。

まあ、生活行為 ≒ ADL + IADL  ぐらい大ざっぱに捉えるとしても、

「生活行為を良くする」ことは、ヒジョーーーに難しいことです。

生活行為に対しての予後予測としては、現状では

「病気・怪我の重症度」≫「OTの介入」であり、

「クライエントの年齢」≫「OTの介入」であり、

「クライエントの金銭的・人的資源の豊富さ」≫「OTの介入」であるのは間違いありません。

もちろん、クライエントに潤沢な資金と超協力的なご家族様がいて、いつでもどんな風にでも建て替えられる家と、知識もスキルも超絶ハイレベルな医療・介護スタッフがついていれば話は別ですが。

 

しかし。

 

実際に遭遇するケースに、そんな恵まれた人はまずいません。

むしろ我々が普段向き合っているのは、

高齢で重度の病気になり、体を動かすのも億劫で、金銭的・人的資源もほとんどない人ではないでしょうか。

 

そのようなケースに対して、あなたは「OTが介入すれば良くなりますよ!」と胸を張って言えますか?

 

生活行為を良くすることができないのであれば、わざわざMTDLPを使う必要はありません。

OT協会が本気でMTDLPをやっていくつもりならば、

病気の重症度や年齢、資源といったマイナス因子を(覆せるとまでは言わなくても)対抗できるぐらいのADL・IADL・生活行為のスキルを作ることが先決ではないでしょうか?

某ダイエットジムのように「結果にコミットする」姿勢はOTが思っている以上に大切です。

OT全体として、自分たちの出している結果にもっと真剣に取り組まなければならないと思います。