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理系作業療法士のブログ

整形外科、認知症、内部障害の作業療法に取り組んでいます。OTの仕事や研究について書いていきます。

AaDO2とか換気血流不均等って何?

この辺の話ってややこしくないでしょうか?

換気血流不均等や拡散障害、シャントなどごちゃごちゃ出てきてなんのこっちゃわからん、という状態になることがあるかと思います。(私だけ?)

ですが換気血流不均等を理解すると、意外とシンプルに説明できます。

さらにこれが分かるとⅠ型呼吸不全についても理解しやすいので、以下簡単に説明します。

QとかVとかは出していません。そちらは教科書でご確認ください。

厳密な正しさよりも分かりやすさを重視しています。

 

AaDO2はなぜ必要なのか?そもそも何を調べようとしているのか?

AaDO2はガス交換(酸素と二酸化炭素の交換)がうまくいっているかどうかを調べています。

PAO2とかPaO2とか出てきて難しいと思いますが、要するにガス交換がうまくいっていない原因を調べようとしているわけです。

ガス交換について細かく調べていく上では何が必要でしょうか?

 

ガス交換には換気と血流の2つが重要

まず、ガス交換においては換気と血流が重要です。

大切なことなので2回言います。換気と血流が重要です。

これを覚えておくと、後々わからないことが出てきても、考えて行くことができます。

この2つがうまくいってこそ、肺の中でのガス交換が保たれます。

換気を行える肺胞の数が多いほうがガス交換にとって良い状態です。

肺胞が潰れたりビチャビチャに濡れていると、換気が悪くなってガス交換がうまくいきません。

せっかく血流がよくて酸素を運んで来ても、肝心の肺胞が潰れていてはガス交換ができません。

それと同様に、血流がない場合は酸素を運んでこられない、という状況ですのでガス交換がうまくいきません。この場合も、もちろんガス交換できません。

 

この2つの状態が換気血流不均等、つまり換気か血流がうまくいっていない状態ということです。

以上を踏まえた上で、AaDO2の3つの要因(換気血流不均等、シャント、拡散障害)について見ていきます。

 

換気血流不均等って何?

ここまで読んで下さった方はもう説明できると思います。

ガス交換をする上では換気と血流どちらも必要で、どちらかがうまく行かなくなった状態の事を指します。

肺炎、間質性肺炎、ARDS、無気肺、肺水腫、気管支喘息COPD、肺血栓塞栓症などでおこります。

 

シャントって何?

換気が全くなくて血流だけが保たれている状態の事を個別にシャントと言います。全くない、というのが重要です。迂回されてしまっている、ということです。肺動静脈瘻で起こります。

 

拡散障害って何?

肺胞が分厚くなったりして、酸素が拡散しにくくなる状態です。

簡単に言えば血流はあるけど換気が低下している状態です。

ここだけ聞けば(血流はあるけど換気が低下している)シャントと同じですが、原因が違います。

シャントは換気される道がなくなっている状態、拡散障害は肺胞が分厚くなったりしている状態です。

間質性肺炎などで起こります。

 

以上のAaDO2が開大する要因(換気血流不均等、シャント、拡散障害)は基本的にⅠ型呼吸不全についての話になります。

以下に呼吸不全についてまとめてみました。

 

呼吸不全について

<Ⅰ型呼吸不全>

  • 酸素化不全を主とする病態
  • PaO2が低下し、PaCO2は正常ないし低下している状態
  • A-aDO2が開大することで起こる、ガス交換機能の障害が主原因(換気血流不均等分布、拡散障害、シャントなど)
  • (拡散能の高い)二酸化炭素の排出は正常
  • 呼吸不全が1ヶ月以内

ここは先程までのAaDO2が開大するのが主な原因です。

 

<Ⅱ型呼吸不全>

  • 主に換気の障害(肺胞低換気)
  • PaO2が低下し、PaCO2が45Torrを超えて増加している状態
  • 一回換気量の減少
  • 呼吸不全が1ヶ月以上

こちらは肺胞低換気による病態です。COPDなどです。

ここまでご理解いただければ、感覚的には呼吸不全についての混同も避けられると思います。

 

まとめ

換気血流不均等は換気か血流かどちらかがうまくいっていない状態である

AaDO2の開大はⅠ型呼吸不全の原因である

 

以上、いかがでしたでしょうか?よければ参考にしてみてください。

 

文献

長尾大志:レジデントのためのやさしイイ呼吸器教室 改訂第2版:日本医事新報社:2015

病気がみえる Vol4.呼吸器:メディックメディア:2013

 

認知機能改善に有効なリハビリテーションは存在するか?  

 

f:id:zenryu:20170517152525j:plain

認知症高次脳機能障害リハビリテーションに取り組まれている方は多いと思います。特に迷いなく取り組まれている人もいるかもしれませんが、私は迷いまくりです(笑)

本日は、認知機能を改善する方法はあるのか?という疑問について書いてみます。まずは、エビデンスの確認から。

 

研究タイプによる信頼性の階層

Ⅰa

Ⅰb

Ⅱa

Ⅱa

 

複数のRCTのメタアナリシスによる

少なくとも1つの、RCTによる

少なくとも1つの、よくデザインされた非RCTによる

少なくとも1つの、他のタイプのよくデザインされた準実験的研究による

比較研究や相関研究、ケースコントロール研究など、よくデザインされた観察的研究による

専門委員会の報告や意見、あるいは権威者の臨床経験

言うまでもないのですが、臨床経験豊富・権威ある人の意見/経験はメタアナリシスよりも信頼性はありません。(意外?)

ベテランの意見よりも、レベルの高い論文を重視するのが当然、ということです。これを前提とした上で、各ガイドラインやコクランレビューを見ていきます。

※注意点として、「高次脳機能障害」「認知機能」の観点から、認知症のレビューと脳卒中のレビューの両方をみています。

 

まずはこちらから。認知症の中核症状に対しては、機能そのものを改善するリハはありません。

 

認知症への対応・治療の原則と選択肢

認知症への対応・治療の原則と選択肢:認知症治療ガイドライン2010)

リハビリテーションは、認知機能や生活能力、生活の質(QOL)の向上を目的とする。認知症の治療では、薬物療法を開始する前に、適切なケアやリハビリテーションの介入を考慮しなければならない。

薬物療法開始後は有害事象のチェックを含めた定期的な再評価が重要である。(グレードなし)

認知症の中核症状を構成する記憶や注意等の認知機能そのものの向上を目的としたリハビリテーションは、Cochrane Libraryでも認知症に対する認知機能向上効果の優位性が示されていない。

 

MCIもしくは健康な高齢者に対する認知機能訓練では、認知的介入の可能性を否定しきれませんが、対照群を上回っていません。優位な効果があるとは言えないようです。

 

大神英一(監訳):健康な高齢者及び軽度の認知機能障害患者を対象とした、認知面に重きを置いた介入:Minds:2011

認知的介入が確かに機能向上につながるというエビデンスはあるものの、認められた効果は、実薬対照群で認められた改善を上回っていなかったため、いずれの効果も認知訓練に明確に帰しうるとは考えられなかった。

 

続いてこちら。記憶障害は改善するか?

改善は難しいようです。代償手段の獲得が必要です。

江川賢一(監訳):脳卒中後の記憶障害に対する認知リハビリテーション: Minds:2007

機能的アウトカム、ならびに他覚的、自覚的および検者が評価した記憶の指標に関する記憶リハビリテーションの有効性を支持する、または否定するエビデンスはなかった。

一般的で標準化されたアウトカム指標を用いて、より頑健で、適切にデザインされ、良質な報告が行われた記憶リハビリテーションに関する試験が必要である。

 

日本脳卒中学会:認知障害に対するリハビリテーション脳卒中治療ガイドライン:2009

記憶障害が軽度→メモやスケジュールの使用を獲得を目的とした訓練が望ましい。

記憶障害が中等度や重度→特異的な技術の習得、領域特異的な知識の獲得を目的とした訓練(グレードB)

•       記憶障害に対する認知リハビリの効果について十分な証拠はない

•       特異的な技術の習得、領域特異的な知識の獲得を目的とした訓練の方が記憶障害そのものを改善するよりも効果的

極めつけはこちら。認知障害に対する作業療法に効果はあるか?

現状、エビデンスがあるとはいえないようです。

江川賢一(監訳):脳卒中患者における認知障害に対する作業療法:Minds:2011

脳卒中後の認知障害に対する作業療法の有効性はまだ不明である。脳卒中を起こした人の基本日常生活機能や特異的認知能力、あるいはこれら両者の改善に、作業療法の一貫として行われる認知再訓練の潜在的利益は、本レビューに含まれたエビデンスにより支持も否定もできない。より多くの研究が必要である。

 

批判やご意見は多数あるかと思いますし、信じたくない気持ちもあるかもしれません。学会発表などでは良くなった報告がなされていますが、残念ながらその殆どは「統計学的に有効」だとは言えません。

 

できることは何か?

基本的に運動と食事を改善することです。特に運動習慣をつけることが非常に重要です。

認知症に限らず、心疾患や脳血管疾患、糖尿病などの生活習慣病に対して運動療法は有効です。エビデンスレベルも非常に高いです。

そもそもアルツハイマー認知症生活習慣病である、という考え方もあるようですが)

アルツハイマー認知症(以下:AD)の危険因子は①身体的不活動②うつ③中年期の高血圧④喫煙⑤中年期の肥満⑥糖尿病

の順番であるようです。①〜⑥のほぼすべてにおいて、運動療法が有効です。

 

日本脳卒中学会:体力低下に対するリハビリテーション脳卒中治療ガイドライン:2009

有酸素運動トレーニングもしくは有酸素運動と下肢筋力強化を組み合わせたトレーニングは、有酸素性能力、歩行能力、身体活動性、QOL、耐糖能を改善するので強く薦められる(グレードA)

慢性期脳卒中片麻痺患者において、サイクルエルゴメーターによる有酸素運動トレーニングは、最大酸素摂取量を増加させ最大下運動時の収縮期血圧を低下させる。

トレッドミル歩行による有酸素運動により、最大酸素摂取量、6MWD、歩行能力は向上し、加えて耐糖能の改善がもたらされる。

 

運動療法が直接的に認知機能を向上させる、と言い切るには根拠がまだ薄いのですが、予防的には効果がありそうです。

 

また、国立長寿医療研究センターが提唱している、「コグニサイズ」も検討の余地はありそうな気がします。まだ論文数が揃っていないようなので根拠があるとは言い切れませんが、感覚的には有効な感じです。

ただし、対象は歩行能力/運動能力が保たれており、認知機能的には健常〜MCIくらいの方が対象かなと思います。

今後の研究に注目したいです。

http://www.ncgg.go.jp/cgss/department/cre/cognicise.html

 

文献

「地獄でなぜ悪い」から患者さんの気持ちを考える

地獄でなぜ悪い」〜入院している時、どんな気持ちか?〜

 

2016年末。「恋ダンス」「逃げるは恥だが役に立つ」が大ヒットし、社会現象と言えるまでになりました。

星野源さんの「地獄でなぜ悪い」という曲をご存知でしょうか?

 

星野源さんは、歌手・俳優・エッセイストであるとともに、その若さでクモ膜下出血とその再発により、入院・闘病生活を送っておられたという過去があります。

再発がわかるまでの合間にレコーディングされたのが、「地獄でなぜ悪い」という曲です。

星野源さん自身の闘病生活の経験が、歌詞に現れています。

 

〜病室 夜がそろそろ 心を蝕む 唸る隣の部屋が開始の合図だ〜

〜いつも夢の中で 痛みから逃げてる〜

〜生まれ落ちた時から 出口はないんだ〜

 

私は入院したことがなく、患者さんの気持ちが分かっているとは言い難いのですが、

この歌を聴くとこれまでの患者さんの顔が浮かんできます。

様々な不安や痛みを訴えておられました。

どんな過去を乗り越えてきたか、語っておられました。

これから家族に迷惑がかかるのではないかと危惧しておられました。

 

医者も看護師も、(それから世間的にはマイナーな仕事かもしれませんが)作業療法士も、

患者さんからはどんなことを考えていて、どんな気持ちで過ごしているのか、感じとらなければいけません。

 

相手の気持ちを考える、そんなことは全員分かっている事ですが、実際に行う事は結構な労力のいることです。

 

新年度ですし、もう一度初心に戻って、しっかりと向き合って行こうと思います。

医療関係者の方は、ぜひこの曲を聴いて頂きたいと思います。

考えるべき事が、そこにはあると思います。

 

〜嘘で何が悪いか 目の前を染めて広がる ただ地獄を進む者が 悲しい記憶に勝つ〜

星野源地獄でなぜ悪い」より

考察って何?〜プロのための考察〜

学生が来れば考察を書かせ、新人が来れば考察を書かせるーーーーーー

経験年数が増えれば増えるほど自分では発表せず、若い人が書いたものに難癖つける。

とりあえず「エビデンスは」と聞いてみる。学会に行けば嫌でも目に着く光景で、OTをやめたくなる瞬間の一つです。

ブラックジョークはこの辺にして、この考察というものが非常に厄介です。突き詰めれば当たり前の事実に行き着くし、そうでなければ妄想になります。

例えば、上腕骨の形状と鎖骨・肩甲骨の形状を知り、4次元的に運動を理解していれば、肩関節の関節運動は自然と決まります。

つまり、突き詰めればもうその方法しかないというところに行き着き、原因は自然と決まるし、やるべきことも自然と決まります。

一方、新しい手技があったとします。◯◯法とか◯◯手技といったものです。ある患者さんには有効な場合があるかもしれません。

しかし我々は、プラセボ効果の威力を知っています。二重盲検化試験に近いデザインの研究をクリアしていないものは、正直あまり…と感じます。

そうすると、考察と定跡の線引きは何か?という疑問にぶち当たります。

 

定跡とは何か?

将棋を指さない人には「定跡」という言葉に馴染みがないかもしれません。

定跡を簡単にいうと、これまでに様々な人(棋士達)が指してきた道筋で、良いとされている方法のことです。

作業療法の世界でも、これまでのOT達の通ってきた道筋があります。

定跡を知っていれば、日々の臨床の世界で思考を減らしてより時間を有効に使うことができるようになります。

正直、勉強するのはこの定跡を増やすためと言っても過言ではなく、知っているだけで解決できる方法が増えるため、勉強すればするほど、素早く問題解決することができるようになります。

コクランレビューや診療ガイドラインもそうだし、本や論文も役立つでしょう。

その一方で、知識が増えれば増えるほど、どこからが考察でどこからが定跡なのか、分からなくなってきます。

実際、学会発表の際にレジュメの「考察」欄は自分の主張と同じことを言っている本や論文を書いている偉い先生を探してきます。

ただ、自分と同じことを言っている人が過去にいるならば、その発表や論文はさほど新しいものではないということですし、そこに意味があるのか?という疑問が必ず湧いてきます。

ここで考えるのをやめてしまうのか、それとももう一歩踏み込んで考えるのかで決まると思います。(なんの仕事でもそうだと思いますが・・・)

 

臨床能力の高さ=全体から部分を考える能力

どんな職場にも、「この人臨床能力高いな」と感じる人は一人はいるのではないかと思います。それは一体なんでしょうか?

その人の何がうまいのかを言葉にするのは難しいのですが、自分なりに考えて言語化すると、物事を全体的に診ることのできる人がうまい人なのではないかと思います。

 

遠回りしてから戻ってくる〜呼吸から脳を考える、脳から整形外科を考える〜

一つの分野だけでやっていると、頭打ちになることがあります。

それは、物事を一面的にしか見ていないからということが多いです。

多面的に見ることで、それまで行き詰まっていたところが急に広がることがあります。

私の場合、呼吸、整形外科、脳、循環などを勉強しています。

それぞれ関係ないと思われるかもしれませんが(実際よく言われる)、そんなことはありません。

人間の中で起きていることなので、当然深めて行くと密接に関係しています。

少しずつ知識を深めて行くことで、呼吸を知ることで脳を知ることができ、脳神経の知識から整形外科を考えることができます。

そんなことできない、と思うかもしれませんが、最初は自分の得意なところから深めて行き、それができたらまた別の分野、と少しずつ広げていき、時々戻って景色を眺めて見ると、結構色々な発見があるものです。

それが真に有用な「考察」ではないでしょうか。

簡単に得られる考察なんて、プロとしての価値はありません。

毎日、ゆっくりでいいからほんの少しずつ前に進む、できることならば遠回りして進むことが大切なのではないでしょうか。

 

最後に、メジャーリーガーのイチロー選手の言葉をご紹介致します。

「合理的に最短距離で進める方法はないです。でももし仮に、まったくミスなくそこにたどり着いたとしても、そこに深みはでない。遠回りすることって、大事ですよ。遠回りすることが、結局一番の近道だと、僕は信じてます」(稲葉元選手とのインタビューから抜粋)

大腿骨頸部骨折の作業療法

大腿骨頸部骨折の患者さんへの作業療法って・・・皆様どのようにされていますか?

 

一年目のとき、一番症例数が多く、一番悩んだ疾患でした。

教科書を読んでも、リーチャーとかお風呂の動作指導ぐらいしか載ってないし、OTとしての関わり方はわからないことが多いのではないでしょうか。

 

ヒントは常に、患者さんの訴えにあります。

皆様は、こんな患者さんに出会ったことはありませんか?

 

「わしは布団でしか寝たくない!ベッドなんて使ったことないし、畳にベッドなんて置きたくない!布団でないと嫌!」

・・・この訴えは、他でもない私自身の話なので恐縮なのですが笑

結構この訴えはよく聞きます。

 

こう言われたとき、どうしていますか?本人を無理やり説得してベッドを設置したりしていませんか?

その人らしさを重視することを自称するOTが、ベッドの設置を必死になって説得する、というのは矛盾していると思います。というか、床上動作をしても脱臼しないかどうか、主治医に確認していますか?

 

その人らしい生活を支援するのがOT、とするならば、この願いを叶えてあげるためにどうすればいいか、ここにヒントがあると思います。

あなたの担当患者さんが、和室で寝られるようにするには、どうすればいいのでしょうか。

 

OTは術後からの取り組みを時期で分類するのがベストだと思います。私が実際に行っている臨床(当院は術後〜退院まで関わる)から、3つに分けました。

 

  1. 解剖学・運動学・生理学・整形外科学的なアプローチ(急性期)
  2. ADLのアプローチ(回復期)
  3. 個人因子・認知機能へのアプローチ(回復期〜退院)

術後すぐは、①が大切です。

術創部をグチャグチャにしないように留意しながら筋スパズムをとる、癒着を予防しなければ、後々非常に困ります。癒着は待ってはくれませんし、悠長なことをしていると拘縮します。

それをしていく上では、X線画像を見て、術式を理解し、縫合されている組織の理解は必須です。まずは一人で勉強し、PTに質問し、可能ならば整形外科医と仲良くなりましょう。床上動作ができる術式かどうかは、整形外科医に確認しなければなりません。無理なものは無理なので、絶対に確認してください。

松本先生の著書が詳しいので、一人で勉強しても結構理解できると思います。参考にしてみてください。

 

次に、②ADLのアプローチですが、これは成書があまりなく、各病院によって行う内容が意外と違います。これは、各施設で相談してもらうと良いと思います。

 

最後に、③ですが、認知機能の評価も必要です。リーチャーを使用したり、股関節屈曲・外旋位での動作(後方アプローチの場合)を獲得する必要があるので、理解と記憶は必要です。私は、高次脳機能はADLに汎化できないことが多いため、学会発表以外では机上検査を取ることにこだわりませんが、MMSE程度はとっておくと良いと思います。リバーミードは…状況を見ながら取っていることとします笑。

 

余談ですが・・・

最近、③をやたら褒め称える風潮があります。もちろん大事なことですし、「患者さんと目標を一緒に話し合って決めるまでは身体には触らない」といった高尚なOTもおられます。それはもちろん、素晴らしいことです。

私も、OTになったばかりの頃は③を活かそうと頑張って某カナダや某作業モデルの評価法を躍起になって評価していたこともあります。しかし、落ち着いて考えてみれば、ここは後からでもなんとかなります。急性期には絶対しません。

理由はもちろん、患者さんにとってベストな治療法ではないからです。

相手(患者さん)の立場に立って、最高のことをしましょう。

 

最近は、「OTとPTの違いって何?」と聞かれることにビビらなくなりました。患者さんにとっては、ベストな治療法ならば、セラピストがPTかOTかなんて、どうでもいいことだと思うのは、私だけでしょうか…笑

 

文献

松本正知(著)、青木隆明(監)、林典雄(監):骨折の機能解剖学的運動療法 その基礎から臨床まで 体幹・下肢

2-10 認知障害に対するリハビリテーション脳卒中ガイドライン2009

エビデンスに基づいた医療(EBM: Evidence Based Medicine)とは何か?

作業療法での科学的・数学的リテラシー

エビデンス、という言葉自体は、最近リハビリ・作業療法の学会でも非常によく聞きますので、馴染みがある人は多いと思います。

しかし、作業療法の業界ではまだまだ科学的・数学的リテラシーが高いとはいえません。今日はエビデンスに基づいた医療(EBM: Evidence Based Medicine)について書いてみます。

 

エビデンスがないとなぜ困るのか?

2015年11月26日、栃木県で、Ⅰ型糖尿病の少年を死亡させたとして、自称祈祷師の男が逮捕された。男は、「少年の腹に悪霊がいる」「インシュリンは体に毒だ」と言って治療をやめさせた上に、「祈祷をすれば良くなる」とし、報酬として、両親から約200万円を受け取っていたという。

もちろん、これは全く根拠のない治療であり、男は殺人の容疑で逮捕された。

 

これは強烈な例ですが、端的にEBMを物語っていると思います。エビデンスのない治療が行われていると、このような悲劇が生じるということです。

しかしなぜ、このような事態が生じたのでしょうか。考えられる仮説として(本当にムリヤリこじつけで考えるならば、ですが)、祈祷の直後は、少年が比較的良くなったように見えたのではないでしょうか。それは、プラセボ効果の働きによるものと思われます。

 

プラセボ効果の凄まじさ

アメリカの麻酔科医ヘンリー・ビーチャーが、第二次世界大戦野戦病院モルヒネが足りなくなったときに、傷ついた兵士にやむを得ず生理的食塩水を注射して、強力な鎮痛剤であるかのように思い込ませた。すると驚いたことに、患者はすぐさま緊張を和らげ、痛みや苦痛や不安のそぶりを見せなくなったのだ。プラセボ効果は激烈な痛みも押さえ込むらしかった。1)

 

治療者の立場からすれば、悪いものではないように見えるかもしれません。しかし、患者側としては大問題です。詐欺がまかり通ることになりかねないし、適切な時期に行われるべき治療の機会を奪われているかもしれません。先程の糖尿病の少年は、適切な治療の機会を奪われています。

では、プラセボ効果を排除した治療を調べるにはどうすればいいでしょうか?

二重盲検化試験という方法があります。

 

二重盲検試験

二重盲検化とは、簡単にいえば患者も医師も効果があるかどうか知らない状態、つまりプラセボ効果を可能な限り排除して治療効果を検証することです。

その条件は以下の7つがあります。

  • 対照群と治療群が比較されること
  • どちらの群にも、十分に多くの患者が含まれること
  • 群への割り振りは、ランダムに行われること
  • 対照群には偽薬を与えること
  • 対照群と治療群とを同じ条件下に置くこと
  • 患者には、自分がどちらの群に属しているかわからないようにすること
  • 医師が患者に施す治療が本物か偽物かを医師も知らないようにすること

 

これらを満たしているものが多ければ多いほど、レベルの高い試験と言われるものです。ただし、全世界で数え切れない本数の論文が毎年発表されています。その中でベストなデザインで行われて、ベストな結果を出している治療法を探している時間など、臨床医にはありません。それでは、どうすればよいでしょうか?

コクラン共同計画(Cochrane2))を利用するという方法があります。

 

コクラン共同計画とは

オックスフォード大学に本部を置き、ある治療法について行われた臨床試験の規模や方法を重視し、厳密な科学的方法による評価(系統的レビュー)を行っている。系統的レビューでは、薬の効果だけでなく、あらゆる治療方法の有効性が評価されている。またコクラン共同計画は、関連企業からは1ポンドたりともお金はもらっていないので、結論は公表されている。1)

 

もちろん、リハビリテーションについて、作業療法についてのレビューもされています。英語で書かれたレビューがほとんどですが、日本語で書かれたレビューもあります。

しかし、作業療法で「エビデンスの高い」報告は、残念ながらあまりないのが実情です。その理由はなんでしょうか?

 

臨床試験の規模と研究方法

コクランで、いや系統的レビューで重要視されているのが、①臨床試験の規模②研究方法です。簡単に言えば、大人数で、かつ、プラセボ効果を優位に上回る効果を示せればよいということになります。

臨床試験の規模は言うまでもなく、被験者の人数です。これは、人数が多ければ多いほど信頼性が高く、少なければ少ないほど信頼性が低いのはいうまでもありません。(率直に申し上げて、系統的レビューの観点で言えば、シングルケースはほぼ意味がありません)

②研究方法は、二重盲検化試験に近い、つまりプラセボ対照群と比較する方法を考えて実践することです。(リハビリでプラセボ効果を排除することは非常に困難ですが…)

まあ、これらはかなり端折った話ですので、参考文献の『代替医療解剖』はぜひ読んでみてください。今回は参考にはしていませんが、脳卒中や循環器などのガイドライン(Minds含む)も、ぜひご一読していただきたいと思います。

 

おわりに

作業療法が生き残っていくためには、苦し紛れの方法ではなく、正攻法であるエビデンスを残していく方法で実践していくこと、これにつきると思います。

簡単にできる方法としては、各個人の数学的・科学的リテラシーを高めること。まずここから、と思います。

 

参考文献・サイト

1)サイモン・シン、エツァート・エルンスト:代替医療解剖:2013

2)Cochrane:our evidence

www.cochrane.org

慢性心不全(CHF)の作業療法

慢性心不全(CHF)の基準

CHFは臨床で良く出会う疾患の一つです。

ただ、最近リハビリ職でCHFの基準の間違いを良く見かけます。

血液検査でのBNPだけ見て、「ああ、心不全だ」と思っていませんか?

 

心不全にはFramingham基準という診断基準があります。

これは2つ以上の大基準、または1つの大基準と少基準2つで心不全と判断します。

内容は成書に譲りますが、簡単に言えば、エコーやBNPは含まれておらず、聴診や労作性呼吸困難など、問診と視診で得られるものが中心である、ということです。

リハビリは20分以上行うことは診療報酬で決まっていますので、セラピストが注意深く観察することは重要です。

また、聴診やX線画像でのCTRなどを自分でも見て、実際の患者さんの状態と照らし合わせて自分なりにデータベースを作りあげていくことは重要だと思います。

 

運動負荷は医師やPTが教えてくれると思いますが、ADLを行っても大丈夫か、どの程度、何をしていくか、は残念ながらエビデンスのあるものはなく、各職場内で連携しながら行っているのが現状だと思います。

そのときにOTが中心になれれば、それが今後急性期における作業療法士の役割になっていくと思います。

 

運動療法のポイント

運動療法を進めていく上で、尿量には敏感になっておきたいものです。

CHFは、利尿剤を中心に治療されます。要するに、体の水分を減らし、心臓にかかる負荷を減らすということです。

尿量が増えていれば良いのですが、運動負荷が強すぎると尿を作る腎臓への血流が減り、筋肉に血流が流れてしまい、尿量を減らしてしまいます。

OTでそこまで運動することはないとは思いますが、注意は必要です。

運動負荷さえ間違えなければ、運動耐容能は思っている以上に改善することもありますので、リハビリをしていて楽しいと感じます。

 

その他のポイント

当院ではCHFと認知症を合併していることも多いため、認知症の評価も必要です。

評価は机上検査だけでなく、家の中が片付いているか、家の中で寝ているだけでないかなど、幅広く評価していくことが重要です。

個人的には学会発表や論文投稿を除けば、認知機能の机上検査は、OTの世界で考えられているほどには重要なファクターでない、と考えているのは内緒です。

その件に関しては今後書いてみようと思います。